【東京電力の今後と将来性】自由化や賠償金問題でどうなる?【企業分析】

東京電力

日本では最大,世界でもトップクラスの規模を誇る電力会社です.
しかし,一方で福島での原発事故により多額の負債を抱え先行きが不透明な企業でもあります.

インフラ企業を志している方たちの中には,
東電に志望するか否かで悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

それを実際に議論していってみましょう.

東京電力ホールディングスとは?

首都圏1都7県および静岡県の富士川以東を供給区域・事業地域とする「一般電気事業者」

売上高:6兆8024億円
経常損益:2080億円
従業員数:33,853人
販売電力量:2570億kWh

言うまでもなく日本最大の電力会社です.
なんとその販売電力量はフランス国全体を賄えるほどです.
また,その事業規模も電力会社に限らず日系企業の中でもトップクラスです.

電力小売自由化に対応するため,ホールディングス制に移行し,100%子会社として
燃料・火力発電事業を担当する「東京電力ヒュエル&パワー」
一般送配電事業を担当する「東京電力パワーグリッド」
小売り電気事業を担当する「東京電力エナジーパートナー」
の3つを所有しています.

また,福島第一原発事故の影響により実質国有化されている企業でもあります.
現在,原子力賠償機構が50%の株を保有しています.
なお,2030年代には全株式が売却される見通しで,ずっと国有企業というわけではありません.

賠償問題ってどうなってるの?

みなさん気になっているのが,今東電の財務状況がどのようになっているかということだと思います.
まず福島第一原発の影響で,東電に支援された公的資金はいくらなのでしょうか?

経産省が発表しているこちらの画像が一番わかりやすいと思います.
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*1

東電に援助された資金はおよそ10兆円
また,表を見る限り東電は4~5兆円の借金があることになりますね.

これを後々国に返還していかなければなりません.

では一方で,東電の経常利益はどうなっているのでしょうか?
昨年あたりに話題に上ったのでご存知の方も多いかもしれませんが,
めちゃめちゃ健全な経営状態をしています.

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*2

2011~2013年あたりは原発事故の影響で赤字となっていますが,
2014年で持ち直し,2015年ではもう原発事故前ほどの健全な経営に戻っています.

どうして原発事故を起こした企業が利益を得ているんだ?
と大バッシングがおこりましたね.
どうしてこんなことが起こったのでしょう?

もちろんこれにはカラクリがあります.
今現在,東電は原発事故の賠償として多額の賠償金を支払っている段階です.
しかし,この支払額はとても今の経常利益で賄えるような額ではなく,
国が被災者第一のため,および東京の電力供給を安定化させるために東京電力に多額の援助金を出しています.

およそその年の賠償金を賄うことができる額が援助金として出されており,
賠償金を特別損失,援助金を特別利益として計上しています.
そのため,現在の経常利益はもともと原発事故が起こらなかった状態の東電から原発分の利益を引いたものと同じです.

さらに,経営合理化や人件費削減の取り組みのおかげで,原発分の利益をカバーでき,
原発がなくてもほぼ元の経営状態に戻っているというわけですね.

しかし,忘れてはいけませんが,先ほど述べたように
この援助金は総額10兆円に上り,4~5兆円は後々返還しなければなりません.
そのため,もう少し経営が安定し始めたら援助金の返還が始まり,経常利益が出にくい体質になると思われます.

東電の今後

もうすでに経営はほぼ安定していると言ってよく,今後も安泰であることは間違いありません.

電力自由化によって現在東京電力はそのシェアを落としていますが,これは自由化した以上仕方のないことです.しかし人々は電力供給の安定性を求めますから,新規電力に移る方は一定数に抑えられ,70%以上のシェアは維持していくのではないでしょうか?

とくに猛暑の日などが続き,東電以外の新規電力で停電が起こったとなれば東電に回帰する流れが確実にできます

また,電力が自由化するだけでなく,ガスも同様に自由化します.実は東電はLNGガスの最大の輸入企業です.電気事業者によって輸入されているLNGガス59,102千トンのうち,24,754千トンすなわち約40%を輸入しています.

これは東京ガスが輸入している約12000千トンを遥かにしのぎます.

したがって,東電はガス販売の分野で間違いなく新規事業者の中でシェア1位になるでしょう.また,LNGガスを大量に仕入れていることから東京ガスよりも安い値段で販売できる可能性が高く,10年後にはシェア30%は軽く超えてくることが予想されます

よって,
電力自由化による利益減少分<ガス自由化による利益増分
となると推測されるので,正直電力自由化の影響は東電にとって微々たるものです.

また,給与体系も徐々に元に戻していく方針らしいので,10年後には全く原発事故がなかったころと同水準の給与レベルに戻るのではないでしょうか?最強すぎますね.東電.

なお,2030年代までは国有企業として存在するので,公務員より少し給料の高い公務員みたいな感じで働けるでしょう.

まとめー結局あり?なし?

圧倒的にありです.
正直,東電は今が底で,これからは何もかも改善されていくだけです.
しかもすでに経常利益が出せるほど経営自体は安定しています.

世間体が気になる方にはおすすめできませんが,
そうでないなら入らない手はありません.

とりあえずエントリーシートだけ出しておくのもありでしょう.
優秀な層は現状の給与体系に満足できないためほとんどエントリーすらしないと思いますので,
まだまだ穴場であることに変わりありません.

他の企業はこちらから
www.atoq.tokyo

*1:「東京電力を取り巻く状況 平成28年11月2日 資源エネルギー庁」より

*2:「東京電力ホームページ 数表でみる東京電力 経理 経常利益」 より

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