【東レの今後と将来性】繊維に不安も炭素繊維シェア1位【企業分析】

東レ株式会社(TORAY)

一般的にはおそらくユニクロと共同開発したヒートテックなどで認知度がある素材メーカーですが,実際の業績などはどうなっているのか.

就職先としてどうなのか見ていきましょう!

特記していない限り,東レホームページよりグラフを引用しています.

東レとは?

創業:1926年
本社:東京都中央区
売上高:20,265億円
従業員数:46,248人
事業内容:繊維,機能化成品,炭素繊維複合材料,環境・エンジニアリング,ライフサイエンスの製造及び販売
企業理念:わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します
まだ100年は経っていませんが,結構な老舗企業ですね.
1926年にパルプを原料とするレーヨンを製造する目的で設立された会社「東洋レーヨン株式会社」が前身です.その後,1970年に「東レ株式会社」に社名変更されました.東レって何だろうと思ってましたが,東洋レーヨンの略称だったんですね笑

過去から現在に至る売上比率の繊維は以下のようになっています.
f:id:k-true:20180206002110p:plain
繊維事業から創業したこともあり,現在でも繊維事業が最大の42%を占めています.その他様々な材料群が続き,最近頭角を現してきた炭素繊維複合材料が8%まで成長してきていますね.
この表からは分かりませんが,リーマンショックを除いて順調に売上高を伸ばしており,とても安定した経営を行っています.

売上高比率がそのまま反映しているように東レでは新たに医薬品・医療機器や水処理分野にも乗り出しており,様々な事業に積極的に進出しています.

中核事業が多すぎるので,このように今後も売上高を維持していくことができるのか,各事業ごとに見ていきましょう.

繊維事業の今後

東レの繊維事業では,ナイロン,ポリエステル,アクリルの3大合成繊維すべてを展開していることが特徴です.この3種類全てを生産している唯一の日本メーカーです.
f:id:k-true:20180206014621p:plain
*1
というのも,アジア勢の低価格戦略に嫌気を指し,他の企業は撤退を進めています.結果的に残った東レは,特に日本市場において独占的な地位を占めています.また,東レも価格競争に巻き込まれるつもりはなく,高機能材料への転換を積極的に進めていっているようです.

そんな繊維事業の売上高推移は下表のようになっています.
f:id:k-true:20180206013803p:plain
順調に売上高を伸ばしていると言えるでしょう.なお,このうちユニクロとの取引割合はおそらく10~20%ほどを占めると考えられます.2015年11月に「戦略的パートナーシップ(第三期5カ年計画)」を締結し,2016~2020年の5年間で素材・製品供給で1兆円以上のビジネス構築が行われます.

したがって,2020年度までは繊維事業は安定して現在と同レベルの収益性を確保できるのではないでしょうか.逆に,この2020年度以降にユニクロが引き続き契約を行わない場合,一気に10~20%の売り上げを失うことが考えられます.

さらに,国内の繊維事業自体が縮小傾向にあることを踏まえると,2020年以降に売り上げを維持or向上し続けるためにはユニクロとの契約に依るところが大きく,不安定感がありますね.

ただし,生活必需品だけあって突如売り上げが激減する可能性は低いと考えられるので,そういった意味では安定した事業領域と言えます.

プラスチック・ケミカルの今後

樹脂・ケミカル,フィルムの各事業を展開しています.近年では自動車向け樹脂コンパウンドや,リチウムイオン電池用のバッテリーセパレータフィルムや有機EL関連での素材が注目を集めています.

そんなプラスチック・ケミカルの最近の売上高推移は次のようになっています.
f:id:k-true:20180206235121p:plain
この分野は自動車産業の盛衰に影響を受けるようで,時として減少に転じることはあるものの,全体としては増加基調にあります.
ただし,この分野においても一般的な樹脂製品は価格競争が激しくなっており,高付加価値商品の展開によって収益力の改善を試みています.繊維事業と同じくこれからも厳しい戦いが繰り広げられていきそうな領域です.

情報通信材料・機器の今後

情報通信材料・機器の売上高は次のように推移しています.
f:id:k-true:20180207000044p:plain
全体として横ばいであり,安定した事業領域です.悪い言い方をすれば,情報通信産業の事業規模が益々拡大している中で売り上げを伸ばせていないことは東レの戦略ミスかもしれません
今後もこの分野は市場規模としてはどんどん拡大していくので,この中で革新的な技術なりを生み出すことができれば莫大な利益を生み出すことができると考えられます.
今後に動向次第な分野でしょう.

炭素繊維複合材料の今後

炭素繊維複合材料の売上高は次のように推移しています.
f:id:k-true:20180207001249p:plain
見て分かる通り東レの中で最も成長力のある分野です.今後も航空機需要の高まりから航空機用のカーボン材料の販売量を増えていくことが見込まれ,さらに,自動車にも炭素材料が次々と採用され始めていることから,今後東レの主軸事業に成長していく事業だと思われます.

また,炭素繊維事業において東レは圧倒的なリーディングカンパニーであり,世界シェアの3割を保持しています.
f:id:k-true:20180207002137p:plain
*2

このように将来性がばっちりであることに加え,さらにもう一点,営業利益率が高いことが長所として存在します.2017年度のデータにおいて各事業の営業利益率は,
繊維事業:7.8%
プラスチック・ケミカル:6.8%
情報通信材料:12.0%
環境・エンジニアリング:5.3%
ライフサイエンス:4.0%
に対して
炭素繊維事業:14.8%
と非常に高い利益率を誇っています.これは製造業の中では非常に高い値で,しかも2016年度では19.4%と驚異的な数字を誇っています.

このように炭素繊維複合材料の今後は東レの今後を牽引する事業であることに間違いないでしょう.

環境・エンジニアリングの今後

環境・エンジニアリングの売上高の推移は次のようになっています.
f:id:k-true:20180207003249p:plain
正直,横ばいです.
ただし,今後の将来性はありといってよいと思います.というのも,この分野は水処理分野であり,東レが開発している逆浸透膜は非常に性能が高いことが知られています.今後,人口が増加していくなかで水の確保をどうしていくかとなった場合,海水や下水の淡水化が対策として挙げられ,需要は確実に伸びていくと思われます.

ライフサイエンスの今後

ライフサイエンスの売上高推移は次のようになっています.
f:id:k-true:20180207003659p:plain
まぁ正直まだ目がでている事業とは言いにくく,今後がどうなっていくか次第といったところですね.東レとしては中期経営計画で力を入れていく分野と言っていますので,売上高自体はどんどん伸びていくと思われます.

就職先としてあり?なし?

結局のところどうやねんと言ったところですが
全体の売上高としては,時として繊維事業の影響でマイナスに転じることが予想されます.ただし,そうであっても炭素繊維複合材料が事業の中核を担うようになり,最終的には必ずプラス成長を成し遂げていきます.

したがって,将来性を見たとき就職先としてはありありでしょう.

欠点としては,勤務地がバラバラすぎるので,必ずしも希望する場所にはいけないという点ですかね.滋賀,京都,石川,岐阜,東京,愛知など色々な場所に広がっており,転勤の可能性もなくもないです.ですので,勤務地重視で考える人には少し向いていないかもしれません.

以上ご参考になれば.

他の企業はこちらから.
www.atoq.tokyo

*1:経済産業省 繊維事業資料より

*2:「経済産業省 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 図122-55」より

Copied title and URL