【5大総合商社徹底比較】業績推移とそれぞれの強み弱みは?【企業分析】

5大総合商社を徹底比較します.

詳細はこちらから.
三菱商事
三井物産
住友商事
丸紅
伊藤忠商事

こちらで書いた内容を簡易的にまとめて,各社の比較を行います.
以下を先に読んで,気になった企業のページを見に行くと良いと思います.



なお,収益,売上総利益,純利益という単語が分からない方はこちらの記事を先に見ていただくと分かりやすいと思います.
商社の業績の見方.収益,売上総利益,純利益とは.営業利益はどこ? – AtoQ

収益

1位:三菱商事(7兆5673億円)
2位:丸紅(7兆5403億円)
3位:伊藤忠商事(5兆5105億円)
4位:三井物産(4兆8921億円)
5位:住友商事(4兆8273億円)
収益1位は三菱商事という結果になりました.しかし思った以上に丸紅と拮抗しているようです.ここまで丸紅が収益力を持っているとは想像していませんでした.収益推移は以下のようになっています.
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住友商事は順調に収益を拡大させていますが,それ以外の企業は波があり,概ね横ばいいった印象です.三菱商事,丸紅と三井物産・住友商事・伊藤忠の間には大きな差があります.

売上総利益

1位:三菱商事(1兆8866円.粗利益率:24.9%)
2位:伊藤忠商事(1兆2104億円.粗利益率:22.0%)
3位:住友商事(9564億円.粗利益率:19.8%)
4位:三井物産(7907億円.粗利益率:16.2%)
5位:丸紅(6772億円.粗利益率:9.0%
売上総利益1位も三菱商事という結果になりました.また粗利益率をみても三菱商事が第1位となっています.さすが,長年総合商社の1位として君臨しているだけありますね.一方で,丸紅は収益で三菱商事と拮抗しているにも関わらず,売上総利益は非常に低くなってしまっています.丸紅は利益が出にくい体質のようですね.売上総利益の推移は以下のようになっています.
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近年,順位変動はなく,各社と緩やかな上昇基調にあります.とくに三菱商事が突出しています.一方で,伊藤忠商事は収益が三菱商事にかなり劣るものの,粗利益率が高く1兆円を超えて第2位に位置しています.効率の良い経営をしていることが分かりますね.

純利益

1位:三菱商事(5601億円)
2位:三井物産(4185億円)
3位:伊藤忠商事(4003億円)
4位:住友商事(3085億円)
5位:丸紅(2112億円)
純利益1位も三菱商事という結果になりました.また,2018年度は各社とも非常に調子が良く,三菱商事,住友商事,丸紅,伊藤忠商事が過去最高益,三井物産が過去2番目の純利益となりました.純利益推移は以下のようになっています.
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2016年は資源価格(特に銅)が低迷した影響で,各社とも減損を計上し純利益が落ち込んでいます.資源比率に大型投資を行っていた三菱商事や三井物産は大きな影響を受け,赤字に転落しています.また2015年の住友商事の赤字も資源(特にシェールオイル)に由来しています.こうした資源関連が落ち込む中,伊藤忠は資源比率が比較的小さいため,安定した業績を維持し,2016年に初めて三菱商事を抜いて第一位の座を獲得しました.この巨額損失から各社的に資源系を一定割合以下に抑える方針を掲げています.

セクション比較

売上総利益

売上総利益に基づく,セクション比率は以下のようになっています.ただし,各企業によってセクション分けが異なるため比較が非常にし辛いです.(統一してほしい).本当は収益から比較したかったのですが,三菱商事や住友商事がセクションごとの収益を掲載していないので断念しました.
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見辛いものの,このように表にすると評判だけでは測れない実態が見えてきますね.金属,エネルギー,機械,化学品(丸紅は素材)は全社取り扱いがありますね.金属に関しては,三菱商事と三井物産が群を抜いています.2社とも資源に強いと言われている企業ですが,売上総利益でみれば三菱商事のほうが倍程度の規模があることが分かります.エネルギーや機械,化学品は同程度の規模があることが分かります.また,繊維がセクションとして独立するほど規模を有しているのは伊藤忠のみです.メディアが独立しているのは住友商事のみとなっています.

純利益

純利益に基づくセクション比率は以下のようになっています.
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三菱商事,三井物産ともに純利益は金属資源へ偏重しています.今年度は特に資源が好調であったためにこのような結果となっています.三菱商事と三井物産が他企業に比べて異常に純利益が大きいのは金属資源の御蔭であり,他の事業の純利益規模は大差ありません.住友商事の純利益はメディア・生活関連が牽引し,丸紅は生活産業(食料や衣料,デジタル)が牽引しています.伊藤忠は最も分散したポートフォリオをしていますね.一つの事業がこけても,他の企業で賄える程度には安定した業績を築いています.

セクションごとの違い

  • 金属

銅が三菱商事,三井物産,丸紅で同規模程度.石炭は三菱商事が強く,鉄鉱石は三菱商事と三井物産が強い.ニッケルは三井物産.亜鉛・鉛が伊藤忠.アルミ・チタンが住友商事.

  • 機械

三菱商事:三菱重工と三菱自動車との連携により,重厚長大物,自動車が強い.三井物産は,三井海洋開発があるのでFPSOに強み.住友商事は建機・重機に強み.丸紅は食料運搬トレーラーに強み.伊藤忠は自動車リースに強み.

  • 電力

電力は丸紅が最大規模.全社取り扱いがある.

  • 食料

ライフサイエンスやサケ養殖,ローソンは三菱商事.穀物取扱量1位は丸紅.青果物やファミリーマートは伊藤忠.コーン,大豆,製粉用小麦など細々したところで三井物産が強い.

  • 衣料・繊維

丸紅か伊藤忠.伊藤忠のほうが規模が大きい.

  • メディア・デジタル

住友商事が強い.丸紅が次点か.

あとは似たり寄ったりな印象です.

それぞれの強み

三菱商事

  • 資源分野に強い(特に銅,炭,LNG)
  • 食品産業(ローソン依存)
  • 総合力がある.全体的に高収益体制で,総合商社のトップに相応しいと思います.

三井物産

  • 資源分野に強い(特に,銅,鉄鉱石,石油)
  • 特定の食料品分野でシェア1位(コーン,大豆,製粉用小麦)

住友商事

  • メディア・デジタル事業に強み(ケーブルテレビシェア1位のJ:COMやSIer大手のSCSK所有)
  • 建設機械や航空機リースに強み(総合商社内最大規模)
  • 非鉄金属(アルミ・チタンなど)を多く取り扱っている
  • スーパーや不動産(首都圏スーパーであるサミットやGINZA SIXなどを取り扱っている)

丸紅

  • 食料分野が強い(穀物取扱量No.1)
  • 電力分野に強み(電力の発電容量は国内企業No.1)
  • 利益が小さいものの,分散した収益基盤

伊藤忠商事

  • 繊維カンパニー(総合商社の中では最大規模.三景やジョイックスコーポレーション(Paul Smith,Duffer,LANVIN,Vivienne Westwood Man)を有する.)
  • 食料カンパニー(青果物No.1やファミリーマートを有する)
  • 非資源分野の割合が高い

それぞれの弱み

三菱商事

(強いてあげれば)

  • 市況の影響を受けやすい

三井物産

  • 市況の影響を受けやすい
  • 資源分野以外であまり目立った強みがない

住友商事

  • 市況の影響を受けやすい
  • 鉄鋼事業(もともと新日鐵住金が住友グループであった名残から鉄鋼の取り扱いに長けています.しかし,近年は中国が過剰生産を行っており,利益が出にくい状況になっています)

丸紅

  • エネルギー・金属分野などの資源投資が少ない.(他の企業に比べて利益を得られる可能性は少ないです.)
  • 低利益体質(上記の理由と食料の取り扱い自体が薄利多売によるため)

伊藤忠商事

  • 収益地域が日本に偏っている(収益地域が日本に偏っており,68%となっています.今後成長していくためには内需に頼らず,よりグローバル化していく必要があります.)

将来性

三菱商事

総合商社の中では一番将来性がある.最も充実したポートフォリオをしており,それぞれの利益規模も大きいです.従来の仲介ビジネス比率がかなり低下しており,事業投資型に移行している.ただし,資源が下落するとどうしてもそれに引きずられて業績が悪化することは避けられない.

三井物産

資源分野に強みを有しているものの,他の分野ではいまいちパッとしない.資源分野の偏重をやめる方針を打ち出してはいるものの,結局資源偏重になるのではないかと思われる.

住友商事

事業全体を見た印象としては,非常に安定している.今後伸びしろとなる分野に強みを多く有しており,恒常的な成長が可能だと考えられる.資源系への傾倒も少ないので,資源による爆益は見込めないものの,逆に安定した経営を行っていけると考えられる.将来的にはより資源系の割合は下がってくる.

丸紅

資源分野の割合を抑え,確実な需要が見込める食料・電力に注力していく方針ですので,今後の需要拡大に伴って成長が期待できます.今後も引き続きそのシェアを獲得し続けられるかどうかが鍵となってくるでしょう.他の商社に比べて特定分野への傾倒が今のところ少なく,安定した経営基盤を有しています.

伊藤忠商事

資源分野に関しては強くないものの,非資源分野に強みを有しています.資源分野がこのままの調子で高騰していった場合,総合商社として1位になることはないでしょう.しかし,資源分野が落ち込んだ場合には,総合商社として1位になる可能性が秘められています.また,丸紅と同様に非常に安定した経営基盤を有しているので,そう簡単には業績が傾くことはないです.

勤務地

伊藤忠商事以外は基本的に東京本社
伊藤忠商事は基本的に東京,大阪本社勤務となります.
あとは業務に合わせて国内,海外問わず多数の出張や駐在が考えられます.

年収

各有価証券報告書より.
1位:三菱商事1540万円
2位:三井物産:1419万円
3位:伊藤忠商事:1383万円
4位:丸紅:1322万円
5位:住友商事:1304万円
総合商社はやはりとても高給取りですね.案外1位の三菱商事と5位の住友商事の間で200万円の差があります.1000万超えてくるとあまり違いがない印象を受けますが,一般的な平均年収である400万と600万円の違いだと考えれば結構違いますね.

まとめ

いかがだったでしょうか?
おおよその総合商社のイメージがつかめたかと思います.個人的な意見がかなり入っているので,気になった点は人事やOBOGに質問して,納得できる会社を選びましょう.
なお,参考文献は以下のページ書いてありますので,そちらから参照してください.

より詳しく知りたい企業があればこちらからどうぞ.
三菱商事
三井物産
住友商事
丸紅
伊藤忠商事

総合商社以外の企業はこちらから.
www.atoq.tokyo

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