株式会社リコー
オフィス用事務機器メーカー大手のリコー
就職先としてありなのかなしなのか見ていきましょう!
リコーとは?
創業:1936年
売上高:2兆633億円
従業員数:97878人
本社:東京都大田区
勤務地
事務系→全国各地
技術系→神奈川・静岡エリア,石川・福井エリアの可能性が高いです.一部大阪や宮城が存在します.
事業情報
以下のグラフは特記していない限り「アニュアルレポート 2018」より引用しています.
(エクセルは資料に基づき作製したオリジナルです.)
リコーの売上推移は以下のようになっています.
売上高は横ばい傾向にあります.基本的にはその他の事務機器用メーカーと同様の推移を取っています.すなわち,複合機(MFP)の市場規模推移と同じということです.以下が複合機の市場規模推移となっています.
強い相関があることが分かりますね.リーマンショック以前は需要がうなぎのぼりでこの世の春を迎えていましたが,リーマンショックによって市場規模は大幅減.その後,2015年でピークアウトし,今後は縮小していく見込みです.
リコーが異なる点は2017年に為替の影響で10%の売上減を記録しましたが,2017→2018年3月期において売上高が増加している点です.これは他の事務機器メーカー(キャノンや富士ゼロックス)にはない点であり,新規事業(特に産業部門)が成功してきているためです.
また,営業利益推移は以下のようになっています.
リーマンショック以降は営業利益が低調に推移しており,2012年に赤字となっています.これは,1万人削減の構造改革費用およびプリンタ事業の減損に由来します.また,一時的に業績は盛り返したものの,近年また悪化しだし,大幅な赤字となりました.これは同様に7700人の人員削減費用とプリンタ事業ののれん減損に由来します.これらはひとえにプリンタ事業に集中投資してきた失策によるものです.のれん減損は2008年に買収したIKON分が1487億円であり,大半をしめています.2008年というオフィスプリンタ事業が最盛期を迎えていたころに買収したため,結果として高値掴みとなり,大幅な減損招きました.
また,純利益推移は以下のようになっています.
純利益は営業利益と同様の動きをしており,2012年,2018年3月期に大幅な赤字を計上しています.
また,リコーの売上地域の構成比率は以下のようになっています.
海外売上比率が61%と比較的海外進出が進んでいます.ただし,米州・国内で約7割と偏重気味であることが分かります.これは今までリコーが規模を追い求め,市場規模が大きい北米で積極的な展開を行ってきた成果とみることも可能です.
また,リコーのセグメント別売上高構成比は以下のようになっています.
従来のオフィス分野が77%と過半数を占めていることが分かります.なお,商用印刷,産業印刷,サーマル分野が成長戦略1,その他が成長戦略2と大きな区分分けされています.
以下で各事業について説明を行いますが,セグメント区分は2017年3月期に変更されたため,それ以前の比較を行うことができません.
オフィスプリンティング分野
複合機やプリンターなどの画像機器を取り扱っています.オフィスプリンティング分野の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
オフィスプリンティング分野は規模を追わずに営業利益を追求する方針へ転換しましたので,今後は市場規模縮小に伴って売上高は減少していく見込みです.一方で,営業利益率は10%前後と高い水準で推移しており,今後はこの営業利益を維持し,他分野の投資資金を稼ぎ出す予定です.
目標値としては,2022年に9000億円,営業利益率11.6%としています.
A3レーザーMFPで世界シェア1位となっています.A3レーザーMFPは3兆円弱の市場規模があり,MFPの主戦場と言われています.
基本的にA3レーザーMFPでのシェアを堅持しつつ,アフターサービスを拡充し,営業利益を高めていく方針を取っています.
オフィスサービス分野
MFP等の周辺サービスに加え,オフィスに関係する様々なサービスを提供しています.例えば,ネットワークインフラ構築,運用保守,業務課題解決ソリューション,業務アウトソーシング,企業間取引のデジタル化などが含まれています.オフィスサービス分野の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高・営業利益率ともに増加傾向にあります.売上高は企業のデジタル化に伴って堅調に推移している一方で,現状では営業利益は赤字となっています.
目標値としては,2022年に売上高6000億円,営業利益率6%としています.
基本的に紙を主体とした外部・内部取引が多いことに着目し,そのデジタル化を主導していく形で売り上げを伸ばしていく方針です.また,事務作業のアウトソーシングを引きいれつつ,MFP関連サービスのサブスクリプション化によって安定した収益を創出していくようです.
商用印刷
デジタル印刷・パッケージ印刷及び,製品化過程におけるトータルなソリューション提供を行っています.商用印刷の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高は横ばい,営業利益率は増加傾向にあります.商用印刷の市場規模は今後も拡大していく見通しであり,この分野はリコーの成長の柱となる分野です.
目標値としては,2022年に売上高2250億円,営業利益率15.5%としています.
産業印刷
産業用の印刷を取り扱っています.たとえば,プラスチック製品やインテリア製品,建材などへの印刷が含まれます.産業印刷の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高・営業利益率ともに増加傾向にあります.基本的に産業印刷は新規産業であるため,売上高が多くはありません.しかし,今後も市場規模は増加していく見込みであり,リコーの新たな柱となる見込みがあります.営業利益率は投資段階にあるため,大幅な赤字となっています.
目標値としては,2022年に売上高800億円,営業利益率12.5%としています.
サーマル分野
バーコードやレシートなどの感熱紙や熱転写リボンなどを取り扱っています.サーマル分野の売上高・営業利益率推移は以下のようになっています.
売上高は増加傾向,営業利益は低下傾向にあります.売上高は世界的な物流の増加に伴って堅調に増加を続けています.一方で,新興国の新規参入などが存在し,営業利益は圧迫を受けつつあります.
目標値としては,2022年に売上高1000億円,営業利益率10.1%としています.
この分野は非常に高い世界シェアを誇っており,感熱紙は50%,熱転写リボンは30%の世界シェアとなっています.今後も新興国における物流の増加に伴って市場規模は拡大していく見込みですので,シェアさえ堅持できれば安定した収益基盤となってくれます.
その他分野
産業プロダクツ(ステレオカメラ,ヘッドアップディスプレイ,プロジェクター用光学モジュール,MEMSなど)や,Smart Vision(360度サービスやAI搭載のクラウドサービスなど)やヘルスケア分野が含まれています.その他分野の売上高推移は以下のようになっています.
売上高は増加傾向にあります.基本的には産業プロダクツのステレオカメラ,ヘッドアップディスプレイが自動車の先進安全設備の導入によって需要が拡大しており,大幅な売上増となっています.
これらの分野は今後の柱とすべく積極投資している段階であり,将来的には芽がありそうな分野に重点投資していくと思われます.
リコーの強み
- オフィス事業での安定した収益
今期は大幅減損を計上しましたが,収益自体は安定してあげることが出来ています.減損要因も今回でほぼ出尽くしましたので,あとは収益性を重視して取り組んでいくことで,その他の成長分野に投資できる資金を集めることが可能です.
- 商業印刷,サーマルなどの高収益体制
特に商業印刷は市場規模が非常に大きく,かつ拡大傾向ですので,非常に有用な分野と言えます.
リコーの弱み
- オフィス分野への依存度が高い
オフィス分野が77%と非常に高い数値を取っています.今後はオフィス分野の市場縮小は免れませんので,売上高は徐々に減少していきます.かといって,ほかの事業がそれを補えるほど規模が大きくないので,M&Aを行わない限り全体の売上高減も不可避でしょう
- 投資分野を分散させすぎ
今までのオフィス分野への一極集中の反動からか様々な分野に乗り出していますが,シナジーの薄い分野にまで進出している印象を受けます.もう少し絞ったほうが効率的な運営ができるのではないでしょうか
- 人を切りすぎ
2012年,2017年と合わせて2万人弱の削減を行っています.正直これだけ人を切れば高収益体制になりますよと言いたいところですが,求心力が下がっていることは間違いないでしょう.
リコーの今後
中期経営計画から見る今後の施策
基本的に各分野ごとの説明で書いたので省きますが,全体としては
- 2023年に2兆3000億円
- オフィスプリンティング売上高比39%への低減
- 成長戦略1(商業印刷・産業印刷・サーマル),2(その他分野)へそれぞれ1000億円の投資
を行っていくようです.
キーポイント
- 成長戦略1(商業印刷・産業印刷・サーマル),2(その他分野)へそれぞれ1000億円の投資
どこの事業を重点的に強化していくかで今後の行方が決まるといってよいでしょう.
リコーは就職先としてあり?なし?
- 勤務地
事務系→全国各地
技術系→神奈川・静岡エリア,石川・福井エリアの可能性が高いです.一部大阪や宮城が存在します.
- 将来性
将来性が高いとは言えません.オフィス事業の売上縮小は避けることができないので,今後もM&Aの影響を除けば売上高が減少していくことは間違いありません.一方で,オフィス事業の縮小を他分野で補えるわけもなく,再び人員過多になると推測されます.したがって,今後も定期的な人員整理が断行されるでしょう.最低1回はあると思います.その人員整理が済めば,成長分野がそこそこに成長している頃合ですので,ようやく成長軌道へ戻っていきます.成長をけん引していくのは,オフィスサービスと商業印刷,産業プロダクツだと思われますが,どこも激しい競争が行われていきますので,予定通りの高収益を確保できるかは未知数です.
- 年収
805万円
商業印刷,産業印刷に興味がある方,あるいは茨の道だがMFPに興味がある方にはありかと思います.リコーはMFP最大手ですので,これを取り扱いたい場合はリコーは選択肢に入ると思います.一方で,これら以外の分野ではわざわざリコーに入る意味もないと思います.
以上ご参考になれば.
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www.atoq.tokyo