ドコモ,ソフトバンク,KDDI(au)を徹底比較します.
こちらで書いた内容を簡易的にまとめて,各社の比較を行います.
以下を先に読んで,気になった企業のページを見に行くと良いと思います.
財務諸表
売上高
1位:ソフトバンク(9兆1588億円)
2位:KDDI(au)(5兆419億円)
3位:ドコモ(4兆7623億円)
売上高はソフトバンクが一位となりました.近年の積極的なM&Aの成果が如実に表れています.一方で,ドコモが3位ということが驚きですよね.ドコモは携帯販売でシェアが1位ですので,せめて2位には入っているだろうと思っていましたが,KDDI(au)に抜かれて3位に転落しています.各社の売上高推移は以下のようになっています.
2013年にソフトバンクが米国第4位の携帯事業者「スプリント」を買収して売上高を3兆円程度伸ばし,他2社を引き離しました.ドコモとKDDIは基本的に拮抗していますが,近年はKDDIの調子が良く初めてドコモを追い抜きました.これは徐々にドコモの携帯端末シェアを奪ってきたことが主要因として挙げられます.表からは分かりにくいですが,全社とも年3%前後で増加傾向にあります.
営業利益
1位:ソフトバンク(1兆3038億円)(14.2%)
2位:ドコモ(9870億円)(20.7%)
3位:KDDI(au)(9627億円)(19.1%)
営業利益もソフトバンクが1位となりました.ただし,売上高ほど大きな差はありませんね.これは国内事業は各社ともに同程度の営業利益率ですが,ソフトバンクの海外事業(スプリント事業)は利益率が悪く,5%前後しかありません.そのため,海外事業は規模が大きくても営業利益への貢献度が小さく,ドコモ・KDDIに対し1.3倍程度となっています.また,営業利益率はドコモがトップとなっていますね.海外事業を殆ど行っていないので利益率が高くなっているともいえ,良いのか悪いのかはみかたによりますが・・.各社の営業利益推移は以下のようになっています.
全社同じような傾向を示しており,営業利益は増加傾向にありますね.
純利益
1位:ソフトバンク(1兆389億円)
2位:ドコモ(7908億円)
3位:KDDI(au)(5725億円)
純利益もソフトバンクが1位となりました.規模的に順当ですね.また,ドコモとKDDIがどうしてここまで差がついたかですが,持分法適用による投資損益の影響が大きいです.KDDIは日本の会計基準に則って,営業利益に持分法による投資損益を含めていますが,ドコモは国際会計基準に則て税引き後に計上しています.そのため,営業利益から考えた結果と比べて大きな差がついています.各社の純利益推移は以下のようになっています.
ソフトバンクが株式を売却したりするなどして,最近は大きな純利益を得ていますね.基本的に全社とも増加傾向にあります.
携帯キャリアシェア
1位:ドコモ(45.3%)
2位:KDDI(31.0%)
3位:ソフトバンク(23.6%)
ドコモがシェア1位となっています.もともとシェアが50%以上あったことを考えるとKDDIやソフトバンクの台頭によって徐々に低下してきていますが,それでもこれだけのシェアを獲得しています.シェア推移は以下のようになっています.
*1
近年はソフトバンクの契約数が頭打ちとなりシェアを落としている一方で,KDDI(au),ドコモが順調に契約数を伸ばしています.特にKDDI(au)の伸びが顕著ですね.
MVNOへの取り組み
MVNOは2018年3月において,移動系通信の契約数において10.6%のシェアを占めています.そのシェア内部での比率は以下のようになっています.
楽天モバイルが一番となっていますね.楽天はドコモとauの回線を使用しています.それぞれの取組は以下のようになっています.
ドコモ
基本的に回線の貸出のみで,サブブランドとして自社で取り組むことはしていません.しかし,MVNO事業者でドコモ回線を利用している割合は非常に高いです.
- OCNモバイルONE(NTTコミュニケーションズなので,系列といえば系列ですがドコモは関与していないていです)
- IIJモバイル(auも)
- LINEモバイル
- DMMモバイル
- 楽天モバイル(auも)
など有名所のほとんどがドコモ回線を利用しています.
ソフトバンク
有名なのはY!モバイルのみです.Yahooはグループ会社なのでサブブランドといっても良いかもしれません.
KDDI
UQモバイル,BIGLOBEを子会社としており,サブブランドとして展開しています.また,楽天と提携しており,MVNOとしての楽天モバイルへの通信の貸出,また,楽天がMVO事業へ参入する際に通信ネットワークローミング提供を行います.
それぞれの強み
ドコモ
- 携帯電話契約数1位
携帯電話契約数は日本国内で第一位であり,45.3%を占めています.KDDIが31.0%,ソフトバンクが23.6%となっています.
- 多種多様なサービスを提供している&アプリプリインストール
ドコモは幅広いサービスを提供しており,それらのサービスを販売端末にプリインストールすることによって,半ば強制的にサービスと接点を作ることが可能です.これは通信キャリアではない他のIT企業にはできないサービス提供の仕方ですね.また,携帯電話契約数が日本一ですので,その利点を最大化できています.決済サービスは今やほとんどの有名IT企業が主導権を握ろうと取り扱っていますが,日本人口の45%に対してd決済を元から利用可能な状況に置いているのは優位性が高いです.
- NTTグループの一員
5Gを1企業が実現するのは技術的な問題だけではなく,通信インフラレベルで改革を行う必要があり非常に難易度が高いです.しかし,ドコモはNTTグループの一員であり,NTTグループは通信インフラを牛耳る組織です.合計で売上高は10兆円を超え,日本最大の通信事業グループです.効率的な研究開発投資やインフラサービスソリューションを提供でき,他の企業よりも優位に5Gへの移行を進められる可能性が高いです.
ソフトバンク
- 他事業に取り組んでいる
ドコモやKDDIは国内通信事業のみですが,ソフトバンクは国内通信事業に限らず,ヤフーのインターネットサービスや北米の通信事業,半導体まで幅広く事業を行っています.また近年では投資事業を積極的に行っており,上記していない事業でもかなり投資が進んでいます.例えばインドではEコマースや決済サービスが非常に伸びており,世界的にはライドシェアサービスにかなり強みを有しています.北米ライドシェア大手Uberやアジア(中国除く)大手のグラブの筆頭株主ですし,中国大手のDiDiも割合は分かりませんが,一定の議決権を有しています.
- 海外売上比率が高い
海外売上比率は51.4%となっており,他の通信事業者より高いです.
- 国内事業の安定性と高い営業利益率
国内事業は非常に安定して推移しており,各種事業への投資の基盤となっています.3大キャリアの中では第3位と最低ですが,それでも20%以上のシェアを占めており,寡占の恩恵を存分に享受しています.近年はMVNO事業者が伸びてきてはいますが,その中にはY!mobileが含まれているので,今後もシェア率では大して変わりはないでしょう.
- 新規事業への取り組みの積極性
ロボットやライドシェアなど,新規事業に最も積極的に投資しているのがソフトバンクという企業です.他の日本企業にはない決断力がある印象です.
KDDI(au)
- 国内携帯端末数シェア2位
寡占が続いている国内通信事業において,シェア2位31.0%を記録しており,極めて安定した収益基盤を有しています.
- ケーブルテレビ事業
J:COMを出資比率50%で有しており,またシェア1位51.7%を獲得しています.
- 電力事業
新規電力事業者の中で,東京ガスに次ぐ第2位につけています.今後も安定的に増加していくことが見込まれており,成長事業の一つです.
- トヨタとの共同研究
今後,コネクティッドカーは5G技術の導入に伴って爆発的に増加すると見込まれています.実際,トヨタでは2020年以降に日本・北米で販売する車両にはコネクティッドカー技術を乗せると決定しています.トヨタグループは世界で3位,企業単体でみれば世界1位の販売台数を有しており,そのトヨタとコネクティッドカー関連技術で共同研究を行っていることは強みです.今後世界で規格統一が成されていくでしょうが,統一規格になる可能性も存在し莫大な利益を生み出す可能性を秘めています.日本と北米に限っても年400万台近くですので,規模としては十分です.
それぞれの弱み
ドコモ
- 海外売上比率の低さ
現在のドコモの海外売上比率は10%を切っていると言われています.ソフトバンクが50%に迫ろうとしている中,どうしてドコモはこんなにも海外売上比率が低いのか?それは過去に海外M&Aに乗り出したことはあったものの,数兆円に上る損失を出し,事業撤退を余儀なくされたからです.imodeで全盛期を迎えていた2000年前後ですね.そのため,実はドコモはあまり手元資金がそこまで多くありません.このまま日本の中だけで商売を続けていくだけでは,5Gという起爆剤があったとしても10年後には確実に頭打ちになってしまいます.早めに次の手を打ち出す必要がありそうです.
- コンテンツサービスの弱さ
多種多様なサービスを提供してはいるものの,そのサービスでトップとなるようなコンテンツがありません.
- 国内通信事業の頭打ち
光通信がかろうじて伸びてはいるものの,その他の収益は頭打ちになりつつあります.ましてや2019年から基本料金の2~4割の値下げを発表しており,収益基盤が危ぶまれています.
ソフトバンク
- 国内通信事業のシェアが伸び悩み
一時は2大キャリアを猛追していましたが,近年はシェアを伸ばせておらず停滞しています.もう国内でこれ以上シェアを伸ばす気はないのかもしれませんが,いつまでもドコモ一強の時代が続いています.ましてや国内通信事業の売り上げはもはや携帯通信事業は横ばい,あるいは下降局面に入っており,ブロードバンドが売り上げを牽引している状態です.
- スプリントの業績不透明感
スプリントはTモバイルと合併しますが,合併したシナジーをしっかりと活かしていけるかは未だ不透明です.スプリント単体では業績は常に低迷しており,果たして合併しただけで大幅に改善していけるのかには疑問符が残ります.
- 自己資本比率の低さ
積極的な投資を見せている一方で,自己資本比率が圧倒的に低いです.業績が悪化したときは悲惨なことになりますが,逆に業績を悪化させない強い意志の表れでもあります.
KDDI(au)
- 海外進出に遅れ
モンゴルやミャンマーに進出はしているものの,売り上げに占めるシェアが高くありません.ソフトバンクが40%近い海外売上比率を有しているので,これは今後の課題でしょう.ただし,ドコモはKDDIよりも低いので最低というわけでは成りません.
- ライフデザイン系列のサービスの弱さ
auユーザーとしてスマートパスやその他サービスを利用したことがありますが,いまいち他サービスに対してメリットを感じるようなことがありません.より魅力的なコンテンツを提供していく必要があるでしょう
将来性
ドコモ
5Gが実現する今後10年は間違いなく問題ないでしょう.その後はどうも成長戦略が不透明であり微妙です.国内ではインフラ的な立場で繁栄するものの,世界的には存在感が皆無な企業となる予感がします.
ソフトバンク
将来性はかなり高いと考えられます.国内通信事業は成熟期を迎えているといっても3強の状況が今後変化するとは考えにくく,安定した収益基盤を築いています.また,北米市場でも3強の一員となったことや他事業へ積極投資していることから,今後の成長余地はドコモやKDDIよりも多いと考えられます.ライドシェア,armの売り上げが今後10年でかなり伸びてくると思われ,国内の売上比率は30%以下まで低下するでしょう.今後人口減で日本の市場が期待できない中,早期にグローバルに展開し始めている経営能力は評価されるべきです.
KDDI(au)
将来性は高いでしょう.特に,コネクティッドカー関連の技術要素をトヨタと共同研究しているのが非常に強いです.このコネクティッドカー関連で先駆的な立場を築くことができれば,ソフトバンクに並ぶ売上高になってくるのではないでしょうか.
その他
勤務地
基本的にどこも同様.
総合職は全国転勤ありです.
エンジニアは基本的に東京近郊,SEであれば主要都市のみです.
年収
各有価証券報告書より.
1位:KDDI(au):936万円
2位:ドコモ:873万円
3位:ソフトバンク:784万円
KDDIが1位となりました.
まとめ
いかがだったでしょうか?
おおよその通信事業者のイメージがつかめたかと思います.個人的な意見がかなり入っているので,気になった点は人事やOBOGに質問して,納得できる会社を選びましょう.
なお,参考文献は以下のページ書いてありますので,そちらから参照してください.
より詳しく知りたい企業があればこちらからどうぞ.
ドコモ
ソフトバンク
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*1:KDDI 2018年アニュアルレポートより